33 えと・おーるつうしん33号 [2004.03.15] ■竹内敏晴レッスン
■たかが習い事、されど・・・
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■旅物語 らくだに乗って
■私のピアノの先生
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旅物語らくだに乗ってprocess27
「問うことで実現することがある」   by M.Y(創育舎)

たった一人の小さな声を大切にしてもらった

 私は“らくだ”という教材を使った学習塾をやっているのですが、そこでの研修は「学習コーディネ―ター実践講座」という講座で行われます。そこには塾の主宰者ばかりではなく、“らくだ”のやり方に関心を持ったあらゆる方が参加されています。
 私が最初に参加したのは10年前になりますが、そのときは「ニュースクール講座」という名前でした。20名ほどの参加者でインタビューゲームをしました。20分ほどインタビューした内容を簡単にまとめるというゲームです。ふたり一組でインタビュアーを交代してやります。私は子どものころから、恥ずかしがり屋で声が小さく、人と話すのは苦手だと思いつづけてきましたから、20分間話を聞きつづけてもらうなんてことは生まれて初めての体験で、私の人生にスポットライトがあたったような気がしました。ゲストや参加者の話を聞いたりして感想を書いたのですが、その次のセッションで書いたことが実現していたので驚きました。たとえば、「○○に興味をもちました」というようなことを書いたら、その話が聞けたりしたのです。講座の中で積極的に話をしたわけではなかったので、書いたものからくみ取ってもらったわけで、たった一人の小さな声をたいせつに扱ってもらったことに感激しました。

話さなくても参加できた

 塾をはじめる前には、二つの企業に計13年間勤めたことがあるのですが、そこでの研修や会議と講座はまったく異なるものでした。就職して初めて出席した会議はたしか車両委員会だったと思うのですが、あまりの退屈さに居眠りをしてしまい、「初めての会議で居眠りするなんて大物だなあ」と言われた覚えがあるのですが、大物にはならず退職してしまいました。
 “らくだ”の研修との一番の違いは何かというと、自発性が発揮されるかどうかだと思います。私が体験した企業での研修や会議は、だれかの話を聞いて終わるものだったためにどうしても受け身になってしまい参加意識が薄かったのですが、講座ではたとえ話さなくても感想を書くことで、参加意識が高まっていったのです。

問われることで考える道筋ができました

 「ニュースクール講座」の2年後に「ニューボランタリー講座」という講座を主催することになりました。 講座の主催なんてできると思っていなかったのですが、それだけに準備期間の数ヶ月で学んだことが多々ありました。
 七月開催なので「ななの会」と命名し、6人のスタッフで準備を重ねていきました。そのとき毎回のように「どうして講座に参加するのか?」、「スタッフになったのはなぜか?」と聞きあっていました。毎回話してみると毎回違った話になることが意外で、考える道筋ができたように思いました。それまで深く考えたことはなかったのですが、人に聞かれて答えることで、一人では考えられないことが考えられるようになったようです。そして、「どうして講座をするのか」を何度も話すことは、知らず知らずのうちに伝わりやすい話をする練習になっていました。

伝えたいことなんてあるの?

 当時スタッフをやっていた横田亮さんは、その講座でやっていたことが、現在のブライダル・コーディネ―ターの仕事に生かされているといいます。
「『こんなイベントをやりたい』、『あんなパフォーマンスをしたい』という結婚披露宴を控えたカップルに『お二人は、披露宴でゲストの方々に伝えたいことがありますか?』と聞くと、『えっ?』という顔をして、『どうしてそんなこと考えなきゃいけないの?』と言われるんだよ。でも、『たとえば、お客様に感謝の気持ちを伝えたいとか、楽しんで帰ってもらいたいとか、なにかおありだと思いますが…』と聞いていくと、だんだんと、より実際的な案が出始めるんだよね。これって、講座で『スタッフとして、なにを伝えたいと思っているの?』と問われたことがすごく影響してると思う。そのときは、『伝えたいことなんてだれにでもあるの?』とびっくりしたんだけど…。でも、伝えたいことがあると、押し付けと思うんじゃないかとか相手のことに敏感になって、結果的にアイデアが生まれたり、気づいたりしやすくなっていたんだね」という話をしてくれました。

了解と確認をとることが顧客満足につながっている

 さらに横田亮さんは、「それともうひとつは学んだことは、『了解と確認』ってこと。会社の会議だとだれかが一方的に話をしたり、指示を出したりということになって、どう伝わったかを確認しなくて、伝わっていないことがわかると『聞き方が悪い』なんて怒られるのがあたりまえなんだよね。接客ではそうならないように『これでいいですか?』、『それはこういうことですか?』と了解と確認をとるようにしている。それが結婚して何年かたってもたずねてきていただいたり、次のお客様を紹介していただくことにつながっているんだと思う。それは、講座で『こうしたいんですけどいいですか?』と了解を取ったり、インタビューゲームで『こういうふうに聞こえたんですけど、これでいいですか?』と確認したりしていたことが身についたんだと思う」と話していました。
 何年も前のことが今の仕事に影響しているなんてことは聞いたことがなかったので驚きでした。「伝えたいことは?」なんて、考えたこともないようなことを考えたことが、忘れられない情報が生まれるきっかけになったのでしょう。知識を得るだけではなく、実践する講座ならではの話だなあと思いながら聞いたのでした。



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