19 えと・おーるつうしん19号 [2001.11.15] ■竹内敏晴講演会へのお誘い
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■女(ひと)かがやくとき
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■青少年問題シンポジウム…
■不思議日記-3-
■飽食の果てに
■教育フォーラムin Soja


飽食の果てに      by K.N


「日本の食糧海外依存率は、60%。毎年2%上がっており、将来80%になる可能性がある。しかも、中国への依存を急激に高めている。(9月18日、日本農業新聞)」
 IFAP(国際農業生産者連盟)アジア委員会で記念講演した、シンプソン教授(龍谷大学)の指摘に驚愕した。
 この国は、既にこんなに海外へ食糧依存しながら、愚行を改めようとするどころか、益々外国への依存率を上げていこうとしているのか。いままで、日本の食糧自給率の低さは繰り返し警告されてきた。しかし、この度の更なる警告には危機感を通り越して恐怖すら感じた。
そんな折、たまたま休暇で帰国中のJICA(国際協力事業団)専門家に、世界と日本の、食糧事情について聞く「緊急講演会」を開催したが、突然の思いつき企画で、一部の人にしか聞いていただけなかったのが残念で、その時の内容を一部紹介したい。

人口爆発がなにをもたらすか?

現在世界の人口は61億3千万人、2050年には93億人に達し、「人口増加、人口移動、持続可能な消費、生産のパターンが生態系に一段と深刻なつめ跡を残しつつある」
 これは、11月7日付けで国連人口基金(UNFPA)が発表した警告である。警告の内容は、先日の講演の内容を裏付けるものだった。人口爆発→食料増産→環境破壊→食糧生産の減少・・・悪循環が続く。
 北(先進国)は穀物を家畜の飼料にして、動物蛋白として摂取するため、穀物のまま摂取する南(途上国)の人々の数倍を消費することになる。牛肉を大量消費するアメリカ人的食生活では、命をつなぐのに精一杯の食事しか出来ないインド人的食事の約4倍もの穀物が必要になる。経済的にゆとりのできた国では、経済成長率に見合って肉の消費が増え、穀物の需要は増大していくが、生産量を増やすことはできない。みんながアメリカ人的食事をすれば、地球の農地は30億人の人しか賄えないという。

自給できない国は、自立した国とはいえない

 主な先進国(オーストラルア・フランス・カナダ・アメリカ)では、ほぼ100%食糧を自給している。日本は、米だけは100%自給しているが、他の食糧は40%、穀物は、わずか28%しか生産されていない。世界の人口は増え続け、地球の農地はもう限界にきているという。それでも日本は、外国から安い食糧を輸入し続けられると思っているのだろうか?

21世紀は水の奪い合いで戦争が起る!?

 近年日本が急速に食糧依存しているのは中国である。中国の人口は13億人、経済成長している中国の人々も、先進諸国に追従して肉の消費を増やし、したがって、穀物の需要は増え続けている。しかし、黄河の三分の二は枯れているという。土地の劣化、砂漠化は進み、荒廃した土地が増え、中国でも作物の増産は望めない。
 地図上では広大な土地が拡がっていても、農耕の第一条件、水がなければ、どうすることもできない。

      畑作には、穀物収穫量の1000倍の水が必要
      水田には、米収穫量の4000倍〜5000倍の水が必要


食の危機・・・量の危機・質の危機

 化学肥料・農薬・除草剤など、増産を目的に使用したものが、土壌を酸性にし、劣化させている。
 食物保存技術は進み、長期保存・遠距離輸送が可能になったが、そのために、様々な食品添加物が大量に使用されている。更に、GMO(遺伝子組み替え)食品の急激な増加など、自然から遠ざかっていく食品の氾濫が、病気の原因ではないだろうか。

「身土不ニ」「地産地消」の理念

 「体と農地は二つに分かち得ないもの」、あるいは「地元で生産されたものを地元で消費する」という考えは徐々に浸透しはじめたが、この二つの理念を徹底させていくことが今、最も大切なことのようだ。四里四方の、健康な土で生産された、大地の恵としての農作物こそが、私たちの健康な体を作ってくれる。

食の文化

 女性を楽にするという戦略で外食産業はめざましい発達を遂げてきた。しかし、便利さと引き換えに、私達はいったいどれほど多くのものを失ってきただろうか?家族の健康を守るために安全で美味しい料理を作るという、家事に費やす時間を惜しんだために、失ったものの大きさにいまさらながら愕然とする。

 世界中の美味しいものを買いあさり飽食の限りを尽くしたキリギリスたちに、どんな冬の時代が訪れるのだろうか?



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