45 えと・おーるつうしん45号 [2006.03.30] ■竹内敏晴レッスン
■最近のいろんなこと20
■あさがお新聞vol5
■口先徒然草
■一人前になりたかった
■げんきだよりNo.50
■こんちゃんのこの世的...
■ようこそ絵本の世界へ


げんきだより NO.50 より  by Y.A


はじめに

書き始めから丸10年の年月を経て、「げんきだより」が50号になりました。
子どもと私たちの間で起こる現場での出来事を文章にして、読んで下さる方々と共有したい、との思いからでした。子どもの言葉、子どもの動き、子どもの表情…それらのひとつひとつが、かわいく、おかしく、そして時に哀しく、切なく、私のからだに入ってきます。一般的に教育界では許されない子どもの実名を使うことにもこだわってきました。ここに登場する子どもはA君でもB君でもなく、その子そのものだという私の子どもに対する想いです。子どもの欠点を取り上げるつもりはなく、書いたつもりもありません。子どもの間で起こっていること、その中で子どもの心が動く様子、発する言葉、そのおかしさや切なさをそのまんま伝えたかったのです。私自身の力のなさから、それがうまく伝わったかどうかはわかりません。読み返してみると、忘れかけていた子どもとの出来事は鮮明に思い出されます。しかし、私の中に進歩はほとんど見られないようです。ただ、ひたすらに子どもたちとの関わりを追い続けてきたことを、このげんきだよりは証明してくれているのかもしれません。
1989年、昭和から平成に変わることになったその1月、とらいあんぐるはスタートしました。17年前のことです。前田先生は3人、私は2人の幼い子どもを持つ母親でした。自分の子どもに何が伝えられるか…自分の子どもには、健康で運動の好きな人になってほしい。最初の生徒は自分たちの子どもと、前田先生が知人から頼まれていた数人の子どもでした。全員で10名にも満たない小さな教室は、口コミだけで18年目へと続いているのです。スタート時点から二人三脚でやってきた前田先生がここで退かれます。寂しいですが、前田先生自身の生き方の選択を、私は応援することに決めました。ここまで一緒に歩けたことを言葉で表現できないくらい感謝しています。私たちの友情はこれからも続くでしょう。そして、とらいあんぐるの子どもたちのことは、私と森山先生で一所懸命みさせて頂きたいと思います。

卒業してからも

1年半ほど前、高校2年生になったゆうたくんが、4人の友だちを引き連れ「先生、体操教えて」とやって来ました。高3の文化祭にみんなの前でバク転がしたいというのです。「文化祭まで」という約束で、彼らを引き受けました。その後、中学生のりょうくんが体操をやりたいと言ってきました。りょうくんは妹がとらいあんぐるで体操をしているので、たまに顔を見せていました。きっと、ゆうたくんたちを見て自分もやりたいと思ったのでしょう。その頃、少しエネルギーをなくしていたりょうくんの様子を、お母さんから聴いていた私は引き受ける決心をしました。これまで小学6年生までだったとらいあんぐるに、中・高生のお兄ちゃんがやって来るようになったのです。その場に流れる空気が変化しました。中・高生は、自分の意志で、技をやりたい一心で練習に来ます。真面目に取り組む姿、心から楽しんでいる姿は、小学生にもよい刺激を与えてくれます。そしてなにより、小学生のチビたちをやさしく扱ってくれる「兄貴」の存在は、今の子どもたちが経験しにくくなっているかけがえのない『関係』を教えてくれます。
先月は、ゆうきくんがやって来ました。彼は今年、体育の先生を目指し、教育学部を受験したのです。センター試験が終わって前期試験までの間、毎週体操の練習に来ました。実技試験で、マット・鉄棒があるからです。先日、お母さんと共に、合格したと報告に来てくれました。試験の前、チビたちから「がんばれ」とエールを送られ、そして今度は「おめでとう」と祝ってもらっている姿は、なんともほほえましいものです。因みに、ここで練習して受験した人は全員合格です。今のところ…ですが。
こうして子どもたちが尋ねて来てくれる度に、小さな教室でよかったと思います。うるさい子ども、おとなしい子ども、ハンディを持つ子ども、友だちとうまくつきあえない子ども、喧嘩っ早い子ども、ものを言わない子ども、今この小さな教室には様々な子どもがいます。どの子どもの中にもあるやさしさをこの場所では見つけることができます。また、子どもは本来運動あそびが大好きです。からだを使ってあそぶことの楽しさを、とらいあんぐるの子どもたちは知っています。体操教室ですから運動能力の向上を求められるのは当然です。しかし、それよりももっと大切なことが、ここにはあるような気がしてなりません。

強くなれ

今年は卒業生が多く、幼い頃から続けてくれた子どもがたくさんいます。 ちっちゃくてかわいかった…今年の卒業生をみて、私は想います。やさしい子どもばかりだと。もう少し強くなって。強さの中から生まれるやさしさもあるのだと。
たけちゃん 恥ずかしがり屋でシャイな男の子です。小柄でおとなしかった彼が高学年になると、変わりました。運動能力もすごく伸び、意志がはっきりしてきたのです。最後の体操の大会で、出場を悩み、出ないことを決断した時が一番印象に残っています。真面目ではないふりをする本当は真面目なたけちゃんがおもしろかったよ。

ゆうくん 先日、中学生が遊びに来ているのかと思ったら、ゆうくんでした。すごく背が伸びたんだと教えてくれました。幼稚園の時からの人のいい笑顔は、私の背をはるかに越えた今も同じです。パワー全開だけどガス欠になりやすい彼でしたが、二重跳びを100回以上跳べるほど、筋持久力もつきました。

将太くん リーダーシップがとれるはずなのに、おとなしい彼はいつも2番手くらいが居心地がいいようでした。ほんわかとしたやさしいしょうちゃんに、強さが加われば鬼に金棒です。幼稚園の時からゆうくんと仲良しで、性格的にも似ていました。ふたりの個性がそれぞれの方向に伸びていってほしいです。

はるかちゃん 幼稚園の頃、元気で無邪気だったはるちゃんが、小学校へ入った途端、おとなしくなった記憶があります。そして、最近は本当にしっかりしてきたなと感じます。自分のことは黙って我慢し、友だちのことは言葉に出して助けてあげられるはるちゃんを「えらい」と思います。

さきちゃんとにかくやさしい子です。弟のりっくんをとても大切におもっていて、その姿に私は何度か涙がこぼれました。さきちゃんはもう少し自分中心になってもいいと思います。自分が何をしたいのか、どうしたいのか自分で決めていいのです。大丈夫、さきちゃんのやさしさはなくならないから。

かなちゃん 一番に思い出すのは、初めて出場した体操の大会です。頑張りすぎて、その後体調を崩したのです。次の年、かなちゃんは出場を迷いました。でも勇気をふりしぼって出ました。その頃から少しずつ強くなった気がします。自分に自信が持てるようになったのでしょう。この自信を失わないで下さい。

さえちゃん 3年生でとらいあんぐるにやって来た時、泣き虫でした。人一倍努力家の彼女は、コツコツ真面目に頑張ります。縄跳びを頑張って跳んでいるのに、かかってしまうと、悔しくて涙が出るのです。かかるとどうしても泣いてしまうさえちゃんに私は言いました。「泣くな」と。泣かなくても大丈夫なんだ、かかったらまた次跳べばいいんだ、たいしたことではないと。その次から、かかっても泣かなくなったさえちゃんは、見違えるほど元気になりました。さえちゃんのパワーはどんな運動部でも通用するよ。

祥太くん 真面目な努力家です。人に調子を合わせたりすることが苦手で、ちょっと不器用な彼ですが、とにかく誠実です。私の話を聴く時も自分が話す時も、しょうちゃんはまっすぐ顔を向けてそらしません。いつもそうでした。

たかくん 5年生の春入会したたかくん、汗びっしょりになりながらも、繰り返し練習していた姿が印象に残っています。ゆったりしていてやさしい彼は、周りの空気をほんわかさせてくれるような存在でした。中学ではたけちゃんと一緒に卓球を頑張ると話してくれました。

ちほちゃん 小さい時から体操が得意でした。元気はいいのにドタバタした感じがなくマイペースで実におっとりしていました。最近、繊細で傷つき易い子どもが多い中、私たちに気を遣わせない子どもでした。「こうした方がいいよ」と注意をすると「うん、わかった」と普通にそのまんま受け入れてくれるのです。玉野から週2日も浦安まで来てくれて、体操、うまくなったね。

まゆちゃん 運動がよくできるのに自信のない子でした。初めての体操の大会は「出ない」というのを強引に連れ出しました。器械のクラスに誘ったのも強引だったかもしれません。でも、今は体操の虜です。体操はもちろん、他のことにもみんなを引っ張ってくれ頼もしいかぎりです。天然のボケがまた最高です。

たっちゃん 野球をやるからと一度は辞めたけれど、やっぱり体操がやりたいと戻ってきてくれました。運動能力は抜群です。気持ちさえあれば、きっとどんなスポーツをやってもうまくなると思います。野球でも他のスポーツでも、まずは楽しんでやるといいよ。自分のやりたいことを自分のために。

きょうちゃん 素朴でやさしく、しっかりした子どもです。自分の気持ちに素直に話しをしてくれ、口数が多いわけではないけれど、話してくれることがよく伝わるのです。彼には器の大きさを感じます。

しりかちゃん 自分の力をきちんとわかっているしーちゃんをすごいと思います。そして、それを自慢することも卑下することもなく、淡々とうけとめ真面目に練習する姿を見てきました。焦ったり慌てないところもいいところですね。

けいすけくん 優等生タイプなのですが、どこか滑稽で憎めない、なかなかおもしろいキャラの持ち主です。友だちに手を貸す時も、「今、こうだから助けてあげないといけないんですよね」とか口に出して言うのですが、それがまたおかしいのです。そんな彼は友だちからも慕われていて人気者でした。

☆いつでも尋ねて来て下さい。いつものとらいあんぐるがあります。お元気で。



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