39 えと・おーるつうしん39号 [2005.03.30] ■竹内敏晴レッスン
■最近のいろんなこと14
■家族を「する」
■口先徒然草24
■旅物語 らくだに乗って
■タマイグラばあちゃん
■こんちゃんのこの世的...
■インカの塩


*最近のいろんなこと14*
 日々のひとしずく

今日は朝から「わたしって一体何やってんの」と思ってしまうような自分の仕事ぶり。おまけに私のきっと一番苦手な人にきつく叱られて、おなかのあたりがずどーんと重くなった。
もう、今日はどんぞこだわ・・・と暗い気持ちでいたら、近くに座っていた女性の患者さんがすっと立って、私のところに来て耳打ちした。「あなたを見ると、ほっとするの」
そして私を見つめる彼女の笑顔を見て、涙が出てきそうになった。

仕事ができるできないじゃなくて、大切なことはなんだろう、と思った。

今、生きている

 職場に、とても素敵な先輩がいる。
 私のもやもやや悩みを、深刻さではなく温かさと明るさで受け止めてくれる。そして、ギターを弾きながら自分の大好きな歌を歌った後「気持ちいいな〜」と幸せそうに呟いている先輩を見ながら思った。人のことをいい気持ちにさせたり、明るくさせたりしたい、と思ったら、大切なのはまず、自分が楽しい状態であることが大切なんだな。
仕事が終わった後、患者のおばあちゃんと座ってゆっくりと話していた。

話は自然と彼女の若い頃の思い出話へと運んでいった。結婚してすぐ夫を失って、毎日泣きながら子どもにお乳をやっていたこと、職場がとても楽しくて、いつも笑っていたこと。そしてひとしきり話したあと、これまでの80年の人生を振り返っておばあちゃんは言った。「ほんっとに、あっというまでした・・・あっというまだったんですよ」満面の笑みを浮かべて遠い目をしているおばあちゃんの横顔が心に焼き付いている。時間はどうしようもなく過ぎていく。私もそういう風にして、今の自分を振り返る時が来るのだろうか。とっても温かい、そして何故かちょっぴり切ない気分になった。

カリンバ療法

大好きな友達が、家にやってきた。その友達と会うときは、いつもどきどきする。そのどきどきの中には、きっと怖さがある。その人といると「お決まりのパターン」ってのがなくて、次に何が起こるかわからないから。
「ひっさしぶりだね〜9月以来かな」
家に来た友達は、その日に起こった出来事を話しながらごはんをガッツガッツと食べ終わると、持ってきた沢山の楽器の中からへんてこな金属製のものを引っ張り出して鳴らし始めた。ビヨヨ〜ン、キュイキュイィィ〜ン
外見からは想像もつかないまぬけな音に思わず笑いだした私も、すかさずカリンバを持たされる。「2人でカリンバ演奏しようよ」と言うと、友達はカリンバを弾きはじめた。オルゴールのような深い響きのする音で、打ち合わせなしにお互いのメロディーを合わせていく。すぐに4拍子になった。だんだんと軽快なリズムに乗ってく。

「さっち上手いね〜、とまんないよ」
たった2人で鳴らしているとは思えないほど広がりのある音の重なりに、思わず目を閉じた。すると、友達は私の背後にまわり、私の頭の上に自分のカリンバを押しつけて鳴らし始めた。うわ〜っ。音の振動が頭蓋骨にビンビン伝わって、からだ全体に音が通り抜けてく〜!友達は、今度はカリンバを私の背中に押し付けて鳴らし始めた。
「これぞ、カリンバ療法」背骨をつたって体の中心を震わせる振動と、どんどん高揚していくリズム。もはや正気ではいられなくなっていた。
音と一緒に、見えない何かが豪速球で胸の奥に直撃してくる。なんだか、少し怖くなった。でも、目を閉じて指の動くままカリンバを弾き続けた。だんだんと2人の音が、ゆっくり、小さくなって、音楽が終わった。
それから2人で物語を作ったり、話をしたりしたあと、友達は帰っていった。
「しばらくは会えないと思うけど、元気でね」友達はカリンバをひとつ私にプレゼントしてくれた。

春がきた

暖かい日差し。こんなに晴れたのは何ヶ月ぶりだろう、というくらい、山陰の冬はいつもどんよりとしていた。でも、雪が降ったときの景色の美しさや、布団の中で朝までかすかに温かさが残っている湯たんぽのぬくもり…今回の冬初めて、冬が好きだ、と思った。

そういえば冬になる前にどうしようもない寂しさを感じたときもあったな。就職してもうすぐ1年がたとうとしているからなのか、一人暮らしをしているからなのか、春の訪れがこんなにも嬉しいと感じるなんて、思いもしなかった。





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