この通信でもたびたび紹介していますが,毎月第2日曜日に,旧出石小学校校舎で「花咲く市場」が開かれています.「ふぞろい野菜村」の小野田さんはじめ,有機野菜を作っている人や天然酵母のパンやさんたちが出店しています.
その出石小学校の校舎の2階を借りて福祉作業場を開いているのが「ステップハウス わ!」のみなさんです.代表の平井育子さんとは4年前の「べてるの祭りinおかやま」で知り合いました.そのころはもちろん「ステップハウス わ!」もまだ生まれてはいませんでした.
平井さん自身,どういう気持ちでこの作業所を「作ろう!」と決意したのか,花咲く市場で豚汁のお店を出している合間にうかがってみました.
1月11日「花咲く市場」が開かれ,「ステップハウス わ!」では豚汁と漬物を作って販売していました.豚汁を作っているときお邪魔したのですが,メンバーさんに作り方を教えている平井さんのことばも手つきもゆったりとして穏やかなのが印象的でした.私たちが「日常」にしているスピードではむずかしいのですね.でもそのゆっくり加減がなんともいえないやさしい空気を作り出していました.
「ボランティアに興味があったんですか?」と尋ねた私に,平井さんは笑いながら答えてくれました.
「最初からこういう場所を開こうと思っていたんではないんよ.今いるメンバーとは「青い鳥作業所」の頃からの3年越しのつきあい.2年前,事情があって一部のメンバーと新しく作業所を立ち上げることになって,ここに来たんです.以前は自営の夫の手伝いをするつもりでいたんだけどね」
そうやって立ち上げた「ステップハウス わ!」も,公的支援が受けられず,寄付と販売でどうにか運営している状態とか.作業場の中には,通所者から利用料金をもらって運営しているところもあるそうですが,「ステップハウス わ!」はこれまで逆に通所者に作業に応じて報酬を払っていたそうです.少しでも自分の仕事がお金になれば生きがいにもなるからでしょう.しかし,現在資金面からそれが無理になってきているとのこと.平井さんは,日々の作業ばかりでなく運営面でも大きな山を迎えています.
「これからもここを開いていくためには,もう誰かの寄付とか,一人のボランティアとかの力じゃだめ.通所者の親,さらには通所者自身が自分たちにとって必要な場所として力を出し合っていかなければ.人に頼っていくという姿勢では運営は難しいですよね」
「ステップハウス わ!」には現在約11名の人が通っています.
知的障害,心の病,身体的障害と,ハンディの種類も状態もさまざまです.年齢も18歳から40歳を越す人まで.
この人たちが力をつけてひとり立ちしていくことができるのでしょうか.
平井さんは信じています.「だって,一人ひとりの中に,それぞれがんばって,少しずつ力がついてきているのが見えるもの.それが,私が今日まで関わってこれたエネルギー源でもあるの」
「ステップハウス わ!」の時間はとってもゆるやかに流れているようです.
旧出石小学校の2階の1部室では,メンバーが思い思いに「さきおり」「キャンドル」「手編みわらじ」を作っています.疲れたらごろんと横になる.行き詰まったらぼーとする.気が乗ったら何時間でも集中する.いろんな状態の人がいます.私が行ったときの,メンバーさんはちょっと恥ずかしそうで,ちょっと人なつこくって,ちょっと一生懸命でした.そのとき,平井さんが作業の合間に何かとかんで含めるように繰り返していたのが「思っていることをとにかくしゃべること」.「しゃべるのはいいことなんよ」,「お話してくれること素敵じゃわあ」.きっとメンバーさんにとってはお母さんみたいな存在なのでしょう.
旧出石小学校の古びた階段を上がった先にある部屋には,色とりどりの裂き織りやかわいいキャンドルが棚に並べられ,お茶やコーヒーが飲める大きなテーブルが訪れる人を待っています.
こんな隠れ家みたいな穏やかな場所が岡山市のど真ん中にあるんです.一度訪れてみませんか?
「ステップハウス わ!」
あいている時間:10:30-16:00
電話:086-222-8686
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