32 えと・おーるつうしん32号 [2004.01.20] ■竹内敏晴レッスン
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■「こんばんは」上映会


駅伝に思う            by H.K


 駅伝ってご存じですか。今さら言うまでもないでしょうが、「たすき」をリレーしながら道路を走る、あれです。今の季節の日曜日はマラソンを含めると、毎週のようにレースのテレビ放映があります。そして、お父さんがテレビを占領し続け、家族は「よう2時間も見るんじゃ」と冷ややかに眺めているのではないでしょうか。
 かくいう私も、ここ数年テレビにかじりついている一人です。子どものころ、レース中継に釘付けになっている父親を「物好き」と半ば見下していたにもかかわらず、です。仕事でかかわったのが関心を持つきっかけですが、今は駅伝というチーム競技が持つ独特のおもしろさにひかれています。

 昨年末のことですが、京都であった全国高校駅伝で岡山県男子代表の倉敷高校が4位入賞しました。正直言って、全国47都道府県の代表が争う大会で上位に入るチームと思ってはいませんでした。全国に通用するエースがいない▽個々のメンバーの最高記録も平凡▽県予選の記録も上位ではない−。実績面ではきわめて平凡な少年たちが、岡山県勢史上最高順位を得てしまったのです。
 42・195`を7つの区間に分け、たすきをつなぐレース。10`の長丁場を走る1区こそ22位でしたが、続く2区で5つ、3区も5つ順位を上げ、4区にリレーした時点で12位。そしてさらに順位を上げ続け、アンカーは競技場内でのトラック勝負で他の2チームを抑えました。7区間を穴も無く走り通すことは至難の業ですが、このチームは実に手堅い走りを見せたのです。
 個々の実績としては特筆すべき点のないチームが、多くのエリートを擁するチームを上回る結果を残した要因としては、序盤にいい流れをつくり、それを後半の選手が気負わず受け継いだことが挙げられます。彼らが集団として発揮した力を、監督は「総合力」と表現しました。
 なかなか、言い得て妙な言葉です。レース本番、選手がぎりぎりの力を振り絞っている局面で、結果を左右するのは「あいつにたすきを渡す時、順位を落とすのは絶対いや」といった心理的な要素が大きいといわれます。個々のメンバーにこうした思いを共通して起こさせる力こそが総合力でしょう。これは一朝一夕で身に付くものではありません。日々の目的を持った生活の積み重ねから、意識的に身につけたものが、ここ一番で大きな力に変化するようです。

 家族も総合力の産物のような気がします。歴史を重ねる中で、「幸せ」と感じられる状況をつくるのは、エースも補欠も決してない、個々のメンバーの着実な走りと、「○○のために」といった意識ではないでしょうか。

 日本で生まれた駅伝という競技が日本人の心を引きつけるのは、集団を重んじてきた国民性にフィットするから、といわれます。自宅で日曜ごと、ぼーっとテレビを眺めているように見えるお父さんも、懸命に走る選手たちの姿に我が人生をオーバーラップさせ、明日の仕事の糧としているのかもしれません。もっと温かい目で見守ってあげましょう。



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