8月の終わりに高校1年生のAちゃんとインタビューゲームをしました。
その日は、“らくだに乗って”シリーズの横田さんと、小西さん、吉市さんの3人が主宰する【岡山考現学ネット】の月1回の講座で、急きょインタビューゲームをすることになりました。8月からネットで書いているAちゃんはこの講座で会うのは2回目、私の相手はAちゃんでした。
■ 高校生とインタビューゲームをすることに・・・
いつもならひとり20分聞きあって2人で40分なのですが、今回は時間の関係で15分になりました。 最初に書いた「この青い空の下で生きてる幸せをもっともっと実感したい!」というのは、Aちゃんの話を聞いて、その話をAちゃんになりきってB6用紙にまとめて書いたあと、最後につけたタイトルです。
Aちゃんが不登校の経験があるということは前回の講座でチラッと聞いていました。ただ、いつごろとか、どれくらいとか、なんでということは知りませんでした。インタビューゲームというのは、3つのルールというのがあって、
(1)何を聞いてもいい。「不登校したことがあるんだって?」と聞いてみてもいい。
(2) 聞かれたことに答えなくてもいい。
「そのことは今話したくないんです」と断っていい。
(3) 聞かれないことを話してもいい。「そのことよりこっちのことが話したかったのに・・・と、あとで言いわけしないためにも、どうしても言いたくなったことがあったら、いってもいい」
この(1)と(2)のルールがあるおかげで、自分の聞いてみたいことをまずひとつ聞き、そこからは相手の話を聞きながら、その答えに寄り添って次の問いを出していくと、そこに2人の世界ができるようです。思い出しました。昨日私がまとめたものを、Aちゃんに、「言ってないことも表現してしまったから、違ってたらなおして」といってみてもらったら、「物語ですね」と言っていました。「なるほど〜」確かに15分で彼女が語られるのだな、と思いました。
■インタビューは物語
彼女の話で印象に残ったのは、中3の時、学校での人間関係に疲れて不登校になった時、お母さんに、「もう半年だから頑張りなさい」と言われて、家出をしたことがあるということでした。
おとなしそうで、落ち着いた雰囲気のAちゃんから「家出をしたんです」と聞いて、びっくりしたのですが、「なんで?」と聞くと、「家にいる私に気がつかないでお母さんが外出してしまって、大好きなぬいぐるみを持って家を出てしまったんです。 川の土手でじっとしていたら、あの橋から飛び降りたら死ねるなと思って、もうどうにでもなれって気持ちがして。その日、空がとても青くて、明るかったんです。空を見上げて、死んだらこの青い空も見えないんだな。この青い空の下でなら生きててもいいな、と思った時、お母さんが大きな声で名前を呼んで私を探しているのが聞こえたんです。それからお母さんと一緒に家に帰って、その日から不登校をし、卒業式にも行かなかったんです」と話してくれました。
今Aちゃんは高校生です。なんでAちゃんは高校に行ったのか?と思いましたが、そのことは聞かないで、「日常はどう?」と聞いたとき、Aちゃんは、「ひまです。夢中になるものがなくて、とにかくひまです」と言いました。「したいなって思うものある?」と聞いたら、「和太鼓」と「人の話を聞きたい」と言いました。「和太鼓しないの?」と聞くと、「私、すぐ止めちゃうから、なんでも中途半端にしちゃうから。学校も不登校したし」と言いました。 そこで15分が終了しました。
彼女の話をまとめる時、最後に、「今したいことは?ときかれて、和太鼓と人の話を聞くことと答えたのですが、すぐそのあと、でも私すぐやめちゃうからなと言っていました。この思いが私にブレーキをかけているんだなと思います。今は、自分のやりたいという思いを大切にしてみたいと思います」と表現しました。彼女が言っていないのに、「やりたいという思いを大切にしたい」と書いたのは、私の願いと私自身が自分に言いきかせて書いた文章だと、後で気がつきました。
■ スポットライトで優越感! 「頑張ってる自分に気づくとき」
ひとりずつ自分が書いてもらったまとめを読んでいったのですが、彼女は「読めないよう、恥かしい」としばらく困って、それから勇気を出して読みました。読み終えた後、「なんだか優越感」と言いました。「優越感」という感想を、インタビューゲームの感想で初めて聞いたのですが、周りにいた人が、「スポットライトがあたった感じ?」というのを聞いて、「なるほど〜」と思いました。
■ 誰でも頑張ろうと思ってる
中3の長女をはじめ3人のむすめがいて、3人ともが不登校の経験がある私は、Aちゃんの話を聞いて、Aちゃんから、「お母さんのことが気になるんよね」「近くにいたいけど、離れもしたいし」「気がついてくれなかった」「お母さんといると安心する」「お母さんが大好き」という言葉を聞き、何度も胸がいっぱいになり、言葉が詰まってしまったりしました。自分の思いを素直に語っている彼女を見ていて、私はとても幸せを感じました。
■ 教室で中2のBくんにもインタビュー 「宿題できて、ほっとした」
Aちゃんとインタビューゲームをした前日、教室の生徒のBくんに3分ほど話を聞きました。彼がプリントをしている間に聞いた話を紙に書いて、彼に「さっきの話、こういうふうに聞こえたんだけど、違ってたらなおしてくれる?」と言うと、「うん、いい」とOKが出ました。
久し振りに宿題が3日続けてできた。今まで「やらんといけん」と思いながらできなかった。「やらんでいい」と思っているのと結果が同じようで嫌だけど、それでもできずにいた。
この3日どうしてできたかというと、お父さんが、朝の10時ごろ「今日はプリントやったん?」と聞くから、「まだやってねえ」というと、「今ここでやろう」と声をかけてくれたから。ぼくはその場ですぐにやった。お父さんが言ったことにむかつかなかったのは、ほんとうに助かったからだ。やるように手助けしてくれて、ほんとうに久々に宿題ができて、正直ほっとした。嬉しい。今は人に手助けしてもらって、とにかくほんとうにやっていくことを大切にしてみたいと思う。
自分で書かなくても、書いたものをみてもらってなおしてもらえば、書いたものができあがっていきます。思いを言葉にする練習、それも私のしたいことのひとつだと思いました。
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