28 えと・おーるつうしん28号 [2003.05.25] ■私なりのシュタイナー
■「集団遊び欠乏症」と…
■魔女の食卓
■口先徒然草13
■旅物語 らくだに乗って
■やってみたい!ことを…
■ハロー,パーティ!-2-


ハロー,パーティ!-2-
 岡山言友会             by NAGI

 岡山言友会とは現在「竹内敏晴さんの講演とレッスン」の主催団体としてご一緒させてもらっています.ご縁をつないでくれたのは,岡山言友会発足以来のメンバーである植山文雄さんです.彼のことは,10年ほど前からお名前は知っていましたが.最初はなんかこわそうな人やなあと思っていました(笑)
 2年前,お互いに竹内敏晴さんに興味を持っていることを確認したところから,お話する回数が増えました.そのなかで,吃音とか,言友会のこととかを知るようになりました.最初は,どう反応していいのかと,とまどったこともありましたが,今はもう,吃音は気にならなくなりました.逆に,植山さんはどもらなかったら「ただのおじさん」なのに,どもることで存在感を強くして得だなあと思えるくらいです(悩みも知らないで!と怒られるかもしれませんが)


 今回,この紹介記事を書くということで,岡山言友会主催の「吃音を考える集い(講師:伊藤伸二さん)」に参加してきました.伊藤さんのお話は,吃音を超えて,人としてどう生きるかということにつながっていきました.私自身,伊藤さんや参加者の方々のお話を聞きながら,何度も自分を振り返り,自分に問いかけていました.

 この集いは年に1回ですが,岡山言友会の活動の中心は,毎月1回の例会,会誌の発行です.そのほか,26の言友会が加入している,全国言友会連絡協議会の年1回の全国大会「吃音ワークショップ」や,ブロック大会(岡山は中四国ブロック大会)への参加,近隣の言友会との交流なども行っているそうです.

 現在の岡山言友会は, 1996年9月に滋賀県で開催された「日本吃音臨床研究会」主催の「吃音ショートコース」(『からだ・ことば・こころ』がテーマであり、ゲストは竹内敏晴さん)で,現会長の村木さんと植山さんが「活動中断している岡山言友会を再度、発足させよう」と意気投合し、村木さんがかつての会員たちに声をかけ、スタートしたものとか. 発足時は9名だった会員も今では35名くらいいらっしゃるそうです.実際には,例会ごとに新しい参加者が来られるのでもっと多いようです。
 男女比は4:1,特に20代の男性がここ1〜2年は急増しているとか.確かに会場には若い男性の姿が目立ちました.

 その中のお一人に聞いてみました.
「岡山言友会に入られた理由は?」
「最初は吃音を治すための情報がほしくて.でも今は仲間と交流するのが楽しみで来ています」
「伊藤さんたちが言われている,治そうとするのではなく,吃音をひとつの特徴ととらえ,そのままの自分で生きる,という考えについてどう思いますか」
「始めはもちろん吃音が治った方がいいと思って,その努力の一環として,この会にも入会しました.でも今は少し変わってきています.ぼくは,僕自身のためだけにここに入ったのですが,今はみんなと何かできれば,ということを考えるようになりました.ここで自分が何かをしてもらうのではなく,僕になにができるかということですね」
「みなさん,すてきなお仲間ですものね」
「ええ,あったかくて,居心地がよくて・・・逆に,こんな気持ちのいいところにいて,大丈夫かなあと思うくらいです」

 例会では, 3分間スピーチ、朗読、発声練習と,毎回盛り沢山.最近では「セルフラーニングを考える会」のメンバーとインタビューゲームをしたそうです.発足当時に比べて今は,1人1人の悩みをじっくり聞いて、それをみんなで考えたり,ということはできなくなりつつあるそうです.それでも,月に1回、気兼ねなく話せる場として、日頃のストレスを発散したり、仲間と語り合う場として、例会は,貴重な場となっています.

会場でお話をうかがった若いメンバーさんの中には「吃音を治そう」という気持ちで参加していると,はっきり言われる方もいました.でもそういう方も,例会や講演会での交流を大切に思っていらっしゃるようでした.

 植山さんが次のように語ってくれました.
「どもりで悩んだからこそ、今の自分があり、人から無視されたり、さげすまれたりすることの辛さがわかるのです。人間は悩むことによってより深い思索ができるようになるのだと思います。ただ、悩んだ末に、どもりを隠そうとして、日常の責務を怠ったり、消極的な人生を送ろうと思ったりすることは、決してプラスにはならないと思います。そういう意味でどもりを肯定的にみる見方が重要な意味をもってくるように思います。 どもりを否定的にみる見方が存在する限り、どもりが治らない多くの吃音者たちはいつまでも悩み続けなければならないのです。
 岡山言友会の古参メンバーは吃音を治そうというより、吃音と上手くつき合いながら、吃音を含んだ自らの個性を磨き、どう自由に、活き活きと生きていくかをいっしょに考える会として、言友会を捉えています。それに対して、若いメンバーはできれば吃音を治したいと思っているようです。
 そういう意味で、現在私が言友会に関わり続けているのは、民間の吃音矯正所、吃音に関する専門家などが出している「吃音は治る」というメッセージに対して、「吃音はひとつの個性であり、吃音を治す努力をするよりも、コミュニケーションに関するもっと根源的な努力をするほうがいい」ということを発信し続けたいと思っているからです」
 植山さんには,言友会を「どもり文化」の発信基地にするという「夢」があるそうです.
 「現在の健常者中心の文化とは異なる様々な文化のひとつとして「どもり文化」を世の中に定着させていきたいと思っています。たとえば、どもり劇団、「どもり方教室」の開催、どもり歌コンサートなどを通じて、どもりが社会のなかで堂々と生き、さまざまな職業でどもりながら仕事をする人達が増え、いつの日か、どもりで悩むのがばからしくなるような世の中になればと思っています」
 どもりから逃げてはいけない.どもりを自覚し,それがあっても,否,それがあるからこそ,私は私と,顔をまっすぐにあげて,生きていきたい.このメッセージは,吃音に限りませんよね.人はみな大なり小なり「欠けたところ」を持っていて,それに囚われて後ろ向きに生きるか,それと向き合って自分を生きつづけるか,人生の中で選択を問われているような気がします.

 今回,集いに参加し,岡山言友会の若いメンバーとお話でき,また改めて植山さんにもお話をうかがい,みなさん,吃音という共通の問題をきっかけに,自分を生きることに誠実に取り組んでいらっしゃるということを強く感じました.
またこの会に参加させてもらいたいと思いながら,会場をあとにしました.


[連絡先]TEL : 0866-93-9401(村木)
ホームページ : http://www1.harenet.ne.jp/~muraki/




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