29 えと・おーるつうしん29号 [2003.07.20] ■鳥山敏子ワークショップ
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旅物語らくだに乗ってprocess23
 こどもに伝えたいことはなんですか? by M.Y(創育舎)

『こどもに伝えたいこと、身につけてほしいこと』を思いつくままに書いてみると・・・

 「おかやま考現学ネット」では、週1回メールで届く課題に答えて、書いたものを交換しているのですが、7月の第1週に「お子さんに伝えたいことは?」という課題が小西稔子さんから届きました。今回は、それにこたえたものをもとに書いてみたいと思います。
 小西さんは次のように書いていました。  
子どもが一人でも生きていけるために子どもに伝えたいこと、身につけてほしいことってなんでしょうか?
 私が我が家の子どもたちの子育てで大切にしていることってなんだろう、と考えると、
 「自分で決めてやり続けること」
 「ピンチのときに、それにめげないでそれをチャンスにしていけること」
 「ひとに助けて、といえるコミュニケーションの力を身につけること」

 ということがうかびます。それを、現在の時点では、「らくだプリント」と「家事」(料理、お風呂の用意、洗濯、水遣りを分担している)を使ってつたえようとしていると思います。もちろん、学校や部活やスポーツ少年団、友だちなど、あらゆることが学びだとおもいますが、親として意識していることは、プリントをしつづづけていくこと、家事をしつづけていくことで、どんな力が身についていくのだろう、ということで、このことには根気よく気にかけつづけていこうと思っています。

 さて、みなさんは、自分のお子さんに伝えたいこと、身につけてほしいと思っていることはなんですか、と問われたら、どんなことが浮かびますか?
 そのために、どんなことに気をつけたり、具体的にどんなことをしていますか?
 思いつくままに書いてみてください。

 課題にこたえて私が書いたものは次のようなものでした。

伝えたいことは「だいじょうぶ」

 「息子さんに何を伝えたいと思っていますか?」と聞かれたら、「ひとことで言えば『だいじょうぶ!』です」と答えるでしょう。

 「勉強してもだいじょうぶ、しなくてもだいじょうぶ。儲かってもだいじょうぶ、儲からなくてもだいじょうぶ。甘えてもだいじょうぶ、甘えなくてもだいじょうぶ。ひとりでもだいじょうぶ、つるんでもだいじょうぶ」と。

 なぜ、こんなことを伝えたいかというと、必ず迷うときがくると思っているからです。
 来年、息子は高校進学予定なのですが、「『なんのために勉強するんだろう』と思ってるんだけど、『受験のためにやれ』っていう先生の言うことは聞きたくない」という息子に対して「このまま勉強しなくていいのだろうか」とか「夏休みになったらアクションを促した方がいいだろうか」と思っていました。
 息子の言うことは筋が通っているように思います。なんのために勉強するかはともかく高校には行きたいと言っているのですから、「こんなところもあるよ」と情報提供だけはしようと、高校のホームページを検索したり、見学に行ったりしてみました。すると、息子には合っているんじゃないかと思うようなところもあって、ここなら大して勉強しなくてもよさそうだと思うと、親の私が安心したのです。そのとたん、このまま何も言わなかったらどうなるか様子を見てみるのも面白いかと思い始めたのですから、げんきんなものです。

お金という条件に縛られないで

 上のだいじょうぶは、とっさに思いつきで書いたのですが、二番目は「儲かっても」ですから、収入のことを心配しているようです。
 息子には「お金がないから○○できない」と考えて欲しくないのです。「お金がないから○○できた」と工夫が生まれるのはOKなのですが。
 もちろん、家計の枠はありますから、なんでもできるわけではないかもしれませんが、我慢を覚えるより「やりたいことはできるんだ」とか「望んだものは手にすることができるんだ」と、お金という条件に束縛されない生き方をして欲しいのです。逆にお金が儲かることを怖れないで欲しいとも思っています。

甘え上手に

 三番目は、「甘え」でした。
 「甘え」は私の天敵のような言葉です。会社を辞めて低収入で暮らしてこれたのは、妻と親のおかげです。それを思うと、自立できていないような気持ちになり、「甘えているなあ」と後ろめたい気持ちに目が向くのですが、かといって「甘えないようにする」ために今やっていることをやめる気はさらさらありません。今でも最良の選択だったと思っています。
 息子がどんな人生を歩むのかはわかりませんが、甘え上手になって欲しいと思います。甘え上手とは、人に頼りながら、期待とは違っても責めることのないような生き方です。

 最後は、「ひとり」と「つるむ」でした。
 私は、30代まで、「人とつるめない自分」、「人の輪に入っていけない自分」に劣等感を持っていました。
 いまは、その体験が塾の生徒対応や講座での場づくりに随分生かされていると思います。考現学を交換したうえで会う機会があると、ひとりでいるときの深まりが、人といっしょにいるときの深まりにも影響するんだなあと感じているところです。
 この時代に生まれてくれば、人とのかかわりを体験し、問題が起こり悩むことと思います。そのとき学ぶことに大きな意味が生まれてくるに違いありません。
 そのために、いろんな学びの場や方法が提供されています。いつから学んでもだいじょうぶだと思っています。悩んだときが学びの始まりでしょう。問題が私を考現学ネットのような豊かな世界を導いてくれたように。

伝えたいことは自分に言い聞かせたいことだった

 これらのことを伝えるために何をしているかというと、実はなにもしていません。これからも息子から頼まれたり、相談されないかぎり、なにもしないつもりです。

 書いてみてはっきりしたことは、息子に伝えたいことは私の個人的な体験からきたものだし、欲しいと思っているのは私自身に言い聞かせたいことばかりでした。
 だから、息子に伝えようとするよりは、自分のことに精を出していたいという思いを強くしたのでした。

So Cafeでも聞いてみた

 創育舎でSo Cafe というお菓子をつまみながらのお話し会があったので、自己紹介がてら、ほかの方にも「こどもに伝えたいことってなんですか?」と聞いてみました。

 そのときは、
 「正しいことは一つじゃないので、正しいと思ったことがあっても、『ほかにはどんなことがあるんだろう』と視野を広げること」
 「いつまでも親に頼るんじゃなくて、外国でもどこでも、震災が起きてもどんなときでも、一人で生きていってほしい。でも、一人では生きられないから、ネットワークを広げていくことを伝えたい」
 「何を伝えたいのか分からないけど、大人の自分がだいじょうぶだと思いたい」

 なんていう話が出てきました。
 聞いていると、やっぱり大人の体験から出てくる話のようです。「自分で自分の限界を勝手に決めない生き方を伝えたい」ということなんだなと思いました。

 私がホントにだいじょうぶなら、息子のこともだいじょうぶだと思えるでしょう。だいじょうぶじゃなくても、そこが豊かな世界への入り口かもしれません。このことは伝えられないことだという気がします。体験するしかないんだと。

みなさんのこどもたちに伝えたいこと、身につけてほしいことはなんですか?



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