この夏、屋久島で、「アニミズムという希望」に出会った。
これは、77年、屋久島の廃村に移住し、「耕し、詩作し、祈る暮し」を営み、昨年8月没した山尾三省の講義禄のタイトルです。
アニミズムとは、宗教の原初形態で、そのアニマの概念、精霊・命・霊魂をテーマに、20世紀終わりの夏、琉球大学で五日間講義した全講義禄が収められています。
アニミズムは、ナチュラリズムに近く、未熟な原始宗教で、縄文時代、死や病への恐怖から生まれた、非常に劣った宗教形態であると、学生時代に学んだ記憶があります。
以来、私のネガティブなアニミズム概念を訂正する機会もなく今日まできました。
ところが、山尾三省が屋久島で「耕し、詩作し、祈る暮し」を通して深めていった「アニミズム」への希望と、彼のライフスタイルに、この夏、強烈な衝撃を受けてしまったのです。
屋久島は、島全体が「センス・オブ・ワンダー(神秘さや不思議さに目を見張る感性)」な世界でした。周囲100キロ余りの小さな島なのに、一番高い宮之浦岳は標高1935メートルもあり、深い森、険しい渓谷、そそり立つ花崗岩の一枚岩、澄みきった水の流れや海の中から涌き出る温泉、なにもかも自然の神秘に満ちていました。屋久ザルや屋久鹿たちも自然の一部として、バランスを保ちながら暮しています。(島には、屋久ザル2万匹・屋久鹿2万匹・人間2万人が暮しているそうです)
海中から涌き出る温泉、平内海中温泉は、干潮時を中心に、その前後五時間ほどが入浴可能です。脱衣するのも、その洋服を置くのも岩の上です。それでもまったく天然のお風呂がすっかり気に入って、何度もはいりました。
二日目の深夜も、旅の仲間三人とゆっくりと満天の星を仰ぎながらおしゃべりしていると、若い女性グループが遠慮がちに私たちの傍に入ってきました。
彼女たちに、「観光ですか?」と聞かれて、もちろんそうなのですが、
「魔女修行よ」と応えてしまいました。
「えっ?」と驚くお嬢さんたち。それでも興味をもたれて、さらに質問されました。
「魔女はネズミを食べるって、本当ですか?」
「ネズミは食べないわ」と返事しましたが、それだけでは終わらないで、ついおしゃべりになってしまいました。
「この近くに師匠が住んでいてね、師匠のところに修行に来ているんだけれど、師匠はネズミどころか、動物性のものは一切食べないらしいのよ。ダシだって昆布やシイタケ。(乳製品も卵も、砂糖もありませんでした) それはいいけど、洗剤を使ってはいけないし、シャンプーも石鹸も、地球を汚すものは一切使ってはいけないというの。島にいる間は出来るけれど、帰ってからの日常で、どこまで地球を汚さない生活ができるかしら・・・。師匠の教えを守ろうとしたら、ストレスで病気になってしまいそう。」
魔女修行の初歩で悩んでいることをついしゃべってしまいました。
それをきっかけに、星明りだけの露天風呂で、環境にやさしい暮し方についての話は盛りあがりました。その日往復10時間かけて縄文杉まで入ってきたお嬢さんたちは、屋久島に魅せられて去年も島を訪れたという人もいて、自然を愛し、日頃からエコロジーな暮しを心がけている気持ちのいい人たちでした。
別れる時、「私たちも小魔女めざします!」とさわやかに言ってくれました。
私たちがここで師匠と呼んでいるのは、近頃、ダンスワーカーと自称していらっしゃるお医者さん、大村雄一先生です。
先生は、きれいな水をみると、太古の昔、魚だった頃のDNAが騒ぎはじめ、泳がずにはいられない人のようで、空港まで迎えに着てくれて、「さあ、泳ごうか」が挨拶だったし、二日目、私には足を浸けるのがやっとの冷たい大川(おおこ)の滝に飛び込んで気持ちよさそうに泳ぎ、海がめの産卵で有名な美しい海岸で泳ぎ、さらに渓谷で泳ぎ、またしばらくして海でと、一日に何回だって泳ぐのです。
屋久島はどこも、涌き出ている水も流れている水も、泳ぎながら飲めるほどきれいです。
水を汚したくないし、汚されたくないという基本的な願いはしかし、とてつもなく困難な時代になってしまいました。
屋久島での先生は、倉敷でお会いした時より活き活きと楽しそうで、屋久島の自然の一部でした。そんな先生としばらく一緒にいて、いつのまにか私たちは彼を「縄文先生」と呼んでいました。
21世紀のアニミズム
世界の宗教はすべてアニミズムから発生したものです。みんな同じ根っこを持っているのです。ところが、宗教は原初を忘れ、分裂しすぎ、頭デッカチになり過ぎたような気がしてなりません。もう原初に戻ることはできないけれど、21世紀、新しいアニミズムを構築していくことは可能ではないでしょうか。
自然のリズムで暮すこと、「スロー・フード、スロー・ワーク、スロー・ライフ」運動を通してすでに、希望のアニミズムは始まっているのかもしれません。
ゆっくりゆったり、心地よく寛げるライフスタイルを確立する事こそ、なにより大切だ
と思った今年の夏でした。
ヒーリングダンスへのお誘い
―「行医」大村雄一(大村クリニック院長)さんをお迎えして
と き : 2002年10月14日(月)午前11時〜午後3時
ところ: 水島サロン コミュニティプラザ A・B
倉敷市水島東千鳥町1−50(086−444−1936)
連絡先: レモングラス 086−456−6336
参加費: 2000円
朝食は控えめにして、楽な服装で、飲み物(水・お茶・孔雀湯など)、タオル、着替えなどご用意下さい。
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